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10/02/03

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『一年でいちばん暗い夕暮れに』 ディーン・クーンツ (ハヤカワ文庫NV)

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ドッグ・レスキュー(虐待されたり捨てられた犬を保護し、里親を助ける仕事)として虐げられた犬の救護に情熱を傾けるエイミーは、その夜、恋人のブライアンとともに不思議なゴールデン・レトリーバーを助けた。同じ夜、ある邪悪な男女が、長年追い続けた獲物を捕える罠をついに完成させようとしていた。因縁で結ばれた二組の男女の運命の岐路に、突如現われた黄金の犬が起こす奇跡とは? 人の悪意がもたらす恐怖と犬への深い愛が織りなす、サスペンスフル・ドッグ・ストーリー。

最近の短めのクーンツ作品では綺麗にまとまった一冊。そして久しぶりに犬が前面に出ているのが嬉しい。なぜ短いか、なぜ犬なのか、それは最近数冊の解説に詳しいのでそちらに譲るとして…

それら以上に読んでいて気になったのは、さらに磨きのかかった自信に満ちた書きっぷり。あまりにも不自然な偶然の要素とか、きっとクーンツに好意的な読者であっても気になる箇所が多数あるのだが、以前のように周到な根回しなどすることなくどんどんストーリィを流してしまう。そこを補うのが最近目に付き出した人の生における説明し難いワンダーの数々への言及。

スティーヴン・キングの最近の短編集に『ジンジャーブレッド・ガール』という中篇が収められていた。人生のあるときジョギングに憑かれた女性が、恐怖に直面した際走ることで希望を見つけるお話である。人生のどこかの時点で不意に訪れるものは数多い。そのまま去ってゆくものもあれば、理由もわからず居座り続けるものもある。そしてそれらの全てが、人生において何がしか意味を持っているのだと、そう気づくことの出来る人間は幸いである。これらを説明するのに長い説明など要らない。自分に照らし合わせてみれば肌で理解できるはずである。このところのクーンツはそういう皮膚感覚に訴える書き方をする。それを理解できる頃合になった読者にそんなクーンツの言葉はよく響くのだ。それを体現した主人公とは対照的な殺し屋の人生を見るがいい。文学という虚構にしか生きることのできない人生のなんと薄っぺらいことか。

後半はこれまでにも増して明快に「希望」へと疾駆するクーンツ・スタイル。そしてクーンツはいつも真っ直ぐで正しい。


『林檎の庭の秘密』 サラ・アディソン・アレン(イソラ文庫)

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アメリカ南部の町、バスコム。ここでは古い家系について信じられていることがある。ホプキンス家の男は必ず年上と結婚する、クラーク家の女は床上手、そしてウェイヴァリー家の者には不思議な才がある――今は草花を育て、料理することに秀でたクレアが独り暮らすウェイヴァリーの家に、10年前家出した妹が幼い娘を連れて帰ってきた。奇妙な共同生活はやがてすべてを変えはじめ……。絆を取り戻してゆく姉妹とそれぞれの恋愛を中心に、田舎町の人間模様を幻想味豊かに描き、口コミから全米ベストセラーになった美しくも繊細な物語。

初イソラ文庫。気恥ずかしさから比較的ロマンス成分の少なそうなものを選んでみたが、これが正解。自然に根ざした魔法の存在を人々が生活の中で受け入れているところなど、日本人ならごく自然に理解できる。閉鎖的な田舎を舞台に魔女姉妹が…といっても『ずっとお城で暮らしてる』のような劇薬になることなく、自分のこととなるとからっきしという都合のよさと可愛らしさで小さな喜劇が展開される。

心の襞をめくってゆく手際は繊細ながら、情景が今ひとつ広がりに欠けるところだけがちょっと弱いか。しかし嫌味なくそれでいて誇張も効いたキャラクターたちに乗せられ、読み口は軽やか。ジェニファー・アニストンとかサンドラ・ブロックが出てるようなロマンス映画にも通じる品のよい佳編。