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coco's bloblog


11/12/18

[] 怪物たちの見る夢は  怪物たちの見る夢は - coco's bloblog を含むブックマーク はてなブックマーク -  怪物たちの見る夢は - coco's bloblog

頭上を漂う物体が巨大で滑らかな体表に小さな影を落としたとき、「それ」は覚醒した。岩の間を這い回る小さな甲殻類や、遠巻きにこちらを眺めるだけで決して近づいてこようとはしない臆病な魚どもを眺めることに飽き考えることを止めてしまって久しいが、海流に乗って頭上をゆっくりと通り過ぎてゆく、見慣れた生き物たちのどれとも違う小さな物体を目にしたとき、それは数万年ぶりに好奇心というものが湧き上がるのを感じた。

細い触手を伸ばし潮の流れに漂う小さな体を捕獲すると、そのまま体内へと浸入する。極度の低水温のため意識を失っているだけで、まだ死んではいないことがわかる。そのまま脳へと達した触手の先端で記憶を探ると、そもそもこの生き物は死の産物であることがわかる。

面白い。


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怪物、とこの生き物は呼ばれていた。死体を繋ぎ合わせて作られたこの怪物は、造り主に敵対し、結果殺し、ここへ流れてきたらしい。

自分と似ている、とそれは思った。

しかし怪物の造物主に対する複雑な感情だけは、それにはまるで理解できなかった。裏切られ、罵られ、この惑星最北の地まで追い詰められようとも、そこには造物主に対する信仰にも似た奇妙な愛があった。そして間接的にとはいえ己を造りあげた神を殺してしまったことに、深く絶望している。

それは触手を手繰り寄せ、体内へと小さな怪物の肉体を取り込んだ。世界は同じようなことを繰り返しているようだが、恐ろしく様変わりもしているようだ。そして興味を惹かれた。使役させるための道具をなぜ自分に似せて作ろうなどと考えたのか。

怪物の、あるかなしかのわずかな意識が拒絶を示す。

もうそっとしておいてくれ、と。

不快な他者の意識を遮断し、必要な記憶のみを食らい、それは己の体の一部を切り離して浮上を始める。


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新しい世界に紛れ込むためにはこの者と同じ形をとるべきだろう。

それは変化する。およそ水中での生活に適した形態でないことがすぐにわかり、不恰好な四肢をばたつかせひたすら海面を目指す。

意思の疎通には肉体上部にある器官から発せられる音を使うことを理解する。

それは再び産声をあげる。

以前にもこんな声で啼いたことを思い出す。

てけり・り……と。


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