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12/08/14

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『暗黒神ダゴン』 フレッド・チャペル (創元推理文庫)

クトゥルー?ヨグ・ソトト?意味不明の言葉が連なる古い手紙。屋根裏部屋に鎖で固定された一対の手錠。片田舎の屋敷を相続した牧師リーランドが見たものは、父の死と関係があるのか?繰り返す悪夢。妻への殺意。やがて彼は、魚類を思わせる異様な容貌の娘ミナに、なぜか心魅かれていく。それが魔界への第一歩とも知らずに…。異端の詩人がラヴクラフトに捧げる恐怖の物語。


『アーカム計画』 ロバート・ブロック (創元推理文庫)

「『ピックマンのモデル』だ」蒐集家のキースが骨董屋で買った絵を見るなり、友人が言った。絵の片隈に署名がある。R・アプトン・ピックマン。ラヴクラフトの小説に登場する画家の名だ。フィクションのはずなのに現実に存在していたとは。そのころ南太平洋の一郭で、大いなるクトゥルーが蠢動を始めていた。世界に永遠の治世をもたらすために。


『クトゥルフ神話への招待 ~遊星からの物体X』 J・W・キャンベルJr.他 (扶桑社ミステリー)

人類の神のイメージとなった“旧支配者”が太古に地球を征服し、それに準ずる神々も存在した。いまは地下や海底や異次元で眠っているかれらは復活のときを狙っている…。極地で見つかった謎の生物との壮絶な戦いを描いて三度も映画化された名作「遊星からの物体X」。映画『エイリアン』『プロメテウス』の原型にあたる「クトゥルフの呼び声」。さらに「恐怖の橋」「呪われた石碑」「魔女の帰還」などラムジー・キャンベルの未訳中短篇五本を収録した、待望のクトゥルフ神話アンソロジー。

訳あってクトゥルーもの2冊を再読。『暗黒神ダゴン』は読み返してもやっぱりよくわからない。解説もまたよくわからない感が出ていてなんだか煮え切らなかったり新鮮な切り口で強引に展開しちゃうところが素敵だ。細密な描写が続く様はロブ・グリエを読んでいるような眠気を催すものの、この語り口はホラーとしての雰囲気と親和性も高くけっして悪くはない。でもやっぱり最後まで読んでもよくわからず、いつかまた読むかもしれないなあとぼんやり思ったり。

『アーカム計画』は痒いところまで手の届くクトゥルーもの…といえば聞こえはよいが、悪く言ってしまえばやりすぎ感のある長編。しかしタイタス・クロウのシリーズを読んだ今となってはこれでも節度ある印象に。これ一冊でクトゥルー神話の諸々を理解できる…という面はあるものの、この題材に手を染める作家たちの備える精神性を思うに、これはやっぱりラヴクラフト作品を多く読み込んだ後に接すべき作品といえるだろう。

『クトゥルフ神話への招待 ~遊星からの物体X』は、映画の公開に併せてのJ・W・キャンベルJr.の新訳。と、それだけではボリュームに乏しいからか、ラヴクラフトの代表作一篇に、なぜかラムジー・キャンベルの緩い繋がりの連作5篇を収録。新訳で読める先の二作が嬉しいのは当然だが、それ以上に国内紹介の極めて少ないキャンベルの短編がまとめて5篇も読めることは思いがけない贈り物。短く軽い口当たりのものが多いが、マニアにとっての満足度は高い。


『追撃の森』 ジェフリー・ディーヴァー (文春文庫)

通報で森の別荘を訪れた女性保安官補ブリンを殺し屋の銃撃が襲った。逃げ場なし―現場で出会った女を連れ、ブリンは深い森を走る。時は深夜。無線なし。援軍も望めない。二人の女vs二人の殺し屋。暁の死線に向け、知力を駆使した戦いが始まる。襲撃、反撃、逆転、再逆転。天才作家が腕によりをかけて描く超緊迫サスペンス。

ディーヴァーもずいぶんと多作な作家で、シリーズ物もそうでないものも併せてこれだけ読んでくれば、出来の良し悪しという整理はどうしたってつけられてしまう。で、個人的にこの作品はやや落ちる部類。「やや」というのは大事なところで、いつものようにこれだけ捻りまくってどんでん返し返しのさらに返しとかやられたら面白くないはずもなく、あくまで他の忘れ難い作品と比べたら、ということ。

とはいえこの一見骨太そうなあらすじを読んでしまうと冒険小説的な味付けを求めることは避けられず、となると自然描写がことごとくスポイルされていたり、たとえ子供じみていようが燃える大義や、ご都合主義でもかまわない運命的なシチュエーションといった「らしさ」に対する期待の大きさはだんだん萎んでしまうことに。また小手先の器用さがそういった力強さとは相いれないようで、それは『獣たちの庭園』でも同様に感じたこと。なんとも贅沢な難癖とはわかっちゃいるが、こちらの舌を肥えさせたのはいつも美味しい料理ばかり提供してきた作者のせいにほかならないわけで。

12/07/10

[] おしらせと最近読んだもの  おしらせと最近読んだもの - coco's bloblog を含むブックマーク はてなブックマーク -  おしらせと最近読んだもの - coco's bloblog

先の文学フリマにて頒布しました同人誌がamazonにて入手可能となりました。

『yARn 1 [蟲] 』


"蟲"を題材に、コミック、SF、ホラー、ファンタジー、パロディ、純文学、伝奇、BL、など様々なジャンルで描かれたアンソロジー。

蛹の中に宿る生と死の境界についての対話「ソロモン・グランディ」。

新米司書と図書館の不思議な住人が登場するハートウォーミング・コメディ「HOW TO CARE FOR SILVERFISH」。

昭和中期、地方のある村で養蚕を志した男とその家族を描く文学小説「天の繭」。

年老いた養蜂家とその養女を巡る哀歓に満ちたSFコミック「養蜂家」。

虫をテーマに描かれたSF・ホラーなど25のショート・ショート「虫25」。

姉妹の間にある狂おしい情念を詩に託した「悪ノ姉妹」。

耳の中に虫がいる、と呟く男の仄暗い怪奇譚「凶音」。

蟻への言及が次第に文章を蝕んでゆき全てが崩壊してゆく「蟻が」。

未知の惑星に棲む知能を持った虫たちを幻想的に描く「拾い屋」。

禁断のボーイズ・ラブ・蟲・SF「ハチゼロイチ式」。

函の中の蟲をテーマにした恐るべき五つの掌編「函」。

あるタトゥーを依頼されたタトゥー屋の呟き「Wizard of Ink and Needles」。

以上、12の"蟲"を巡る物語が本の中に詰まっています。



以下、最近読んだもの。


『ホーンズ 角』 ジョー・ヒル (小学館文庫)

壮絶な復讐劇のすべてを、その角が知っていた。フランツ・カフカ『変身』に匹敵するプロローグから、魔物に取り憑かれたような息もつかせない描写が、壮絶なラストシーンまで続いていく。『ハートシェイプト・ボックス』『20世紀の幽霊たち』などの快作で、日本でも着実にその地位を確立してきたモダンホラーの貴公子の最高傑作。

『心のナイフ』 パトリック・ネス(東京創元社)

 

ぼくはトッド・ヒューイット。あとひと月で十三歳、つまり正式な大人になる。ぼくが住んでるプレンティスタウンは新世界のたったひとつの町。この星に入植したぼくらは、土着の生き物と戦争になった。やつらが撒いた細菌のせいで女は死に絶え、男は互いの考えがすべて“ノイズ”として聞こえるようになってしまったのだ。ある日、町はずれの沼地で、ぼくはノイズのないまったき静寂に出会った。これは何?それとも誰?異様な迫力、胸が締めつけられるような感動、尽きせぬ謎。ビッグタイトルを独占した“混沌の叫び”三部作、第一弾。ガーディアン賞、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞、ブックトラスト・ティーンエイジ賞受賞作。

『いばらの秘剣 1竜の玉座』 タッド・ウィリアムス (ハヤカワ文庫FT)

種々の民族がせめぎあう大陸、オステン・アード。かつて妖精族が築きし城砦ヘイホルトよりこの地を統べる長老王は、死の床に伏していた。せわしない城内で孤児サイモンは偶然、王の治療師モーゲンズの助手となる。やがて老王は崩御し二人の王子のうち兄イライアスが跡を継ぐが、サイモンはある日、新王の顧問にまつわる秘密を垣間見る――さまざまな歴史と伝説を背景にした壮大な世界で描かれる名作叙事詩、ついに開幕!


感想はそのうち時間が出来たら…

12/05/13

[] 『マイクロワールド』 マイクル・クライトン (ハヤカワ・ノヴェルズ)  『マイクロワールド』 マイクル・クライトン (ハヤカワ・ノヴェルズ) - coco's bloblog を含むブックマーク はてなブックマーク -  『マイクロワールド』 マイクル・クライトン (ハヤカワ・ノヴェルズ) - coco's bloblog

  

ピーター・ジャンセンは生物学を専攻する大学院生。マサチューセッツ州ケンブリッジの大学で、仲間の六人の院生と共に先端研究にいそしんでいた。そんな七人の科学者が、新薬開発を行なうベンチャー企業Nanigenマイクロテクノロジーズにリクルートされる。ハワイの謎めいた研究所に招かれたピーターたちは、そこでハイテクを駆使した革新的な装置“テンソル・ジェネレーター”の存在を知るが…。やがてNanigenが関わる犯罪を知ったピーターら七人は、“テンソル・ジェネレーター”によって身体を百分の一サイズに縮められ、ハワイの密林に放り込まれてしまう。四十八時間以内にもとの大きさに戻らないと副作用から死を招くらしい。牙をむく獰猛な大自然を前に、若き科学者たちは専門知識のみを武器にジャングルから決死の脱出を図る―。クライトンの死後パソコンから発見された未完の遺稿を、練達のサイエンス・ライターが書き継いだ、巨匠の真骨頂を示す最後の傑作スリラー。


過去『ジュラシック・パーク』しか読んでいないクライトン。日頃言及することもあるが、それは『ウエストワールド』や『コーマ』といった古い監督作品に関してのほうが圧倒的に多い。SF方面でも同様な印象を受けるが、これはジャンル作家云々よりも器用さが仇になっているからだろうか。なんて考えていたところ、SFマガジン6月号における酒井昭伸氏のエッセイを読んで姿勢を正すことになった。ヴェルヌ、ウェルズを引き合いに大変慧眼の読み物となっており、これを念頭に今回の新刊は一層愉しむことができた。


年中虫の写真を撮ってばかりいるが、ファインダー越しに小さな生き物たちの世界を眺めていて思うのは、自然はけっして優しくもないし、かといって厳しいかというとそんな人間の尺度とも違う、生き死にがごく当たり前に繰り返されているだけだということ。そういう観点からするととてもフェアな視点で書かれた本書は、それだけでもう自然観察好きには好アピールである。しかしそうは言っても冷徹な目線とは別に、虫好き(あるいはホラー好き)なら大抵の者が考えるであろうこと、あの世界にちっこくなって迷いこんだらどんな恐ろしい目に遭うんだろう…が、納得行くリアルさでもってここには記されている。


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身長2cmになったら、普段可愛い可愛いと言ってるハエトリグモクモを目の前にしてもそんなこと言える?


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狩りバチの麻酔針を受け、生きたまま巣穴の中で幼虫にむさぼり食われるのはどんな気分?


全ての虫好きの妄想がここに!

とまあ、痒いところにまで手が届く詳細な描写のオンパレードに嬉しくなってしまうのであった。特に寄生の生々しさは出色で、こういうものが好きというアレな人でも鳥肌もののこの描写は、ホラー分野でもちょっと例がないほど。なにも異星を舞台にして名状し難い生物を持ち出さずとも、現実をありのままに描くだけでこれほど瞠目に値するものになるのだ。

昆虫観察をしていれば、こんな多雨林に放り出されたら人間など5分と生き延びれるわけがないと思うのが普通だが、そこは娯楽作品らしく(質量が変わることによる当然の設定だが)上手い回避方法が採られている。といっても過酷さが減じることのない展開もあって、緊張感は最後まで持続する怒涛の上下巻。遺稿を引き継いだリチャード・プレストンの功績はかなり大きいと見た。個人的にはダグラス・プレストンが好き勝手やったバージョンを読んでみたくもあるが…

11/10/10

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今年度版の『ミステリが読みたい!』のランキングに投票させていただけることになったので、このところミステリばかり読んでいた。しかしそんな事情がなくとも手に取ったであろう面白本ばかり。


 『ブラッド・ブラザー』 ジャック・カーリィ(文春文庫)

きわめて知的で魅力的な青年ジェレミー。僕の兄にして連続殺人犯。彼が施設を脱走してニューヨークに潜伏、殺人を犯したという。連続する惨殺事件。ジェレミーがひそかに進行させる犯罪計画の真の目的とは?強烈なサスペンスに巧妙な騙しと細密な伏線を仕込んだ才人カーリイの最高傑作。

すでに数冊既刊のあるシリーズものだが、つながりは緩いようなので私のようにここから読んでも存分に楽しめる。サイコものはそれこそ星の数ほどあるが、ここでのトンデモお兄さんのキャラクター造形の素晴らしさはそれらと一線を画する。もちろんそれ以外にも読みどころは沢山。緩急効いた構成と複線の妙。正直ディーヴァーと比べるのは(個人的思い入れがあるせいか)ちょっと違う気もするが、一気読み必至というリーダビリティは遜色なし。


『謝罪代行社』 ゾラン・ドヴェンカー(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

失業したクリスら四人の若い男女は、依頼人に代わって謝罪する仕事を始めた。ある日、彼らの一人が指定の場所に行くと、壁に磔にされた女性の死体が!依頼人は死体に謝罪し、それを録音して送ること、死体を始末することを求めた。家族の身を守るため拒否はできなかった。やがてさらに不可解な事件が起き、彼らを悲劇が襲う!ひたすら車を走らせる「わたし」とは誰か?女性を殺した「おまえ」の正体は?謎めいた行動をする「彼」とは?さまざまな仕掛けを施して描く、驚愕のドイツ推理作家協会賞受賞作。

ここ最近のポケミスにハズレなし。目まぐるしい視点・場面の転換、複雑きわまりない語りと構成、そしてあまりにも苦い展開と、死体を巡る黒いユーモア。幻惑されつつ流され、それが最後に収束するときのこの快感。早川書房がポケミスとミステリ文庫のダブルヘッダーで推すのもうなずける力作。


『ねじれた文字、ねじれた路』 トム・フランクリン(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

ホラー小説を愛する内気なラリーと、野球好きで大人びたサイラス。1970年代末の米南部でふたりの少年が育んだ友情は、あるきっかけで無残に崩れ去る。それから25年後。自動車整備士となったラリーは、少女失踪事件に関与したのではないかと周囲に疑われながら、孤独に暮らす。そして、大学野球で活躍したサイラスは治安官となった。だが、町で起きた新たな失踪事件が、すべてを変えた。過去から目を背けて生きてきたふたりの運命は、いやおうなく絡まりあう――。

英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー(最優秀長篇賞)、ハメット賞ほか多数のミステリ賞ノミネート。

そしてトム・フランクリンの長編をついに読める…この悦びといったら。短篇『密猟者』ただ一作でここまで焦燥を募らされた作者の、期待に違わぬ傑作。五感を刺激しまくる圧倒的な描写力と、繊細な郷愁の同居に胸焦がすこと必至。


『探偵術マニュアル』 ジェデダイア・ベリー(創元推理文庫)

雨が降り続ける名もない都市の“探偵社”に勤める記録員アンウィンは、ある朝急に探偵への昇格を命じられた。抗議のため上司の部屋を訪れるも、そこで彼の死体を発見してしまい、否応なく探偵として捜査を開始するはめに。だが時を同じくして都市随一の探偵が失踪、謎の女が依頼に訪れ…アンウィンは奇々怪々な事件の迷宮へと足を踏み入れる。ハメット賞受賞の驚異のデビュー作。

一見色物キワモノ。でもこれが面白いんだなあ。『未来世紀ブラジル』、『夢宮殿』…いろいろ想起させるものは過去にもあったが、調理法の個性でオリジナルなものになっている。ハマると怖い個性的な一冊。