アヴラム・デイヴィッドスン

アヴラム・デイヴィッドスン

「あるいは牡蛎でいっぱいの海」は、読んだことある様な気がする。

 アヴラム・デイヴィッドスン1923年生まれ)は、名前から想像がつくように、正統ユダヤ教徒として育ったアメリカの作家。SF界屈指の技巧派として、玄人筋の評価が高いわりに紹介が進まないのは、ペダントリー過剰で悪趣味すれすれの饒舌な文体がとっつきにくいのと、代表的な長編がすべて尻切れトンボで終わっていることが原因だろう。作者は93年に他界したので、これらが完成することは永久になくなった。しかし、オカルティズムや疑似科学に精通したデイヴィッドスンの作風は、澁澤龍彦氏の著作などに親しんだわが国の幻想文学愛好家には歓迎されるような気がするので、今後の紹介を期待したい。

中村融「猫たちの饗宴ふたたび」

(J・ダン&G・ドゾワ編『不思議な猫たち』解説、扶桑社ミステリー)

 ある種の作家たちは、特定のジャンル、たとえばハードSF、エピック・ファンタシー、剣と魔法物、サイバーパンクなどにおいて、古典となるような長短編を書くことで、SF・ファンタシー分野に貢献する。一方、つねにジャンル小説の境界線を押し広げようとする作家たちもいる。そのように限界を超えようとした作家のひとりが、アヴラム・デイヴィッドスン(1923~1993)だ。彼は生涯において、17編の長編を出版し、200編以上の短編やエッセイを執筆した。

 デイヴィッドスンの作品は、SF、ファンタシーからミステリーの長短編に及んでいる。その短編は才気と博覧強記で知られており、いくつもの賞を受賞し、さまざまなアンソロジーに収録されている。「あるいは牡蠣でいっぱいの海」はヒューゴー賞短編部門を受賞し、「ラホーア兵営事件」はMWAからエドガー賞を授与された。

Henry Wessells "Something Rich and Strange"

(→The Avram Davidson Website)

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